第97回箱根駅伝振り返り②

第97回箱根駅伝を振り返る第2弾です。

 

○近年まれに見る想定外、1区の激闘

近年の高速化に伴い、各チームがエース級の選手を起用してきた1区。特に優勝を目指すチームにとってここでの遅れは致命的なものになる。ところが今年はまさかのスローペース。最初の1kmは3分30秒かかるなど互いが牽制し合う展開が終始続いた。区間賞の有力候補だった順天堂の1年生三浦や東海の塩澤、青山学院の吉田、前回区間2位の國學院の藤木を抑えて区間賞を獲得したのは法政の鎌田。最後は塩澤との一騎打ちとなったが、なんとか振り切り、法政としては徳本一善さん以来の1区区間賞獲得となった。1区は唯一全員が一斉にスタートし、スパートのタイミングの駆け引きが行われるなど、分かりやすい且つ戦略が試される区間なので、非常に見応えがある。

 

○入れ替えは1チームのみ、シード校の強さが際立つ

例年であれば予選会から出場のチームが3、4校はシード権を獲得するケースが多いが、今大会は順天堂が総合7位に入っただけで、シード校が9つ連続シードを獲得する結果となった。往路終了時では順天堂、神奈川、拓殖がシード券圏内だったが、神奈川は10区で佐々木が区間2位の走りをみせたが、その他4人が区間2桁順位で総合13位まで後退、拓殖は6区の佐々木が区間18位と低迷。その後も全員が区間13位以下で総合15位まで順位を落とした。1区区間賞で周囲を驚かせた法政も2区からは全員が区間2桁順位で、最終的には総合17位まで後退した。その一方で、5区で失速し往路では総合11位だった早稲田が、6区での1年生の北村の58分台の走りを皮切りに、8区3年生の千明、9区2年生の小指の活躍などで総合6位まで順位を上げてフィニッシュした。また、往路まさかの12位に沈んだ青山学院も復路優勝を果たし、総合順位も4位までジャンプアップした。

 

○1年で定位置へ返り咲き、東洋大学復活の狼煙

駒澤の逆転優勝、青山学院の復路優勝の影に隠れがちだが、前回総合10位となり、連続総合3位以内の記録が11で途切れた東洋が見事総合3位に輝き、1年で総合3位以内に返り咲いた。相澤や今西といった力のある選手が卒業し、前評判は低かったが、期待のルーキー松山がエース揃いの2区で区間4位の好タイムで流れを作り、5区では区間記録保持者の宮下が連続の区間賞こそ逃したが、総合2位でフィニッシュした。復路では6区の1年生九嶋が区間14位、エース西山が7区で区間12位と不本意な走りで優勝争いからは脱落したが、8区の野口が区間2位の走りで順位をひとつ上げると、10区では3年生の清野が一度は青山学院に抜かれるも再び抜き返し、総合3位を守った。松山と宮下が残る次だけでなく、来季は東農大二高の石田も入学してくるので、さらなる飛躍が期待される。

 

○トラックタイムは当てにならない?明治まさかのシード落ち

創価の躍進や青山学院の失速など今大会は予想外の出来事が数多く起こったが、個人的に最も予想外だったのは優勝候補にも挙げられていた明治が総合11位で優勝どころかシード権すら取れなかったことだ。各チームの能力を計るひとつの要素となるのがトラックのタイム。エントリー選手上位10人の平均タイムは5000mが3位、10000mが2位と実力は十分にあった。さらに全日本大学駅伝では駒澤、東海、青山学院に割って入り、総合3位に輝くなど期待値も非常に高い状態で臨んだ今大会だった。しかし、1区の1年生児玉が区間16位、2区の加藤が区間17位とブレーキとなり、2区終わった段階で総合17位と大きく出遅れる展開に。さらに期待されたエースの小袖も3区区間12位と低調な走りとなり、4区櫛田が区間7位、5区の鈴木が区間9位とまずまずの走りをみせたが、ゲームチェンジャーの役割は果たせず、まさかの往路14位という結果に終わった。復路は6区のキャプテン前田に期待がかかったが、60分切りが精一杯で役割を果たせず。小袖とともに期待値が高かった手嶋も区間11位と流れを変えられないまま8区へ。8区では大保が区間賞の走りでようやく反撃の狼煙をあげる。9区で11位まで巻き返すが最終的に10位と26秒差で逆転は叶わなかった。

エース級の小袖、手嶋、鈴木の3人がまずまずの走りしかできずに、流れを変えることができなかったのが痛かった。これだけ実力者を揃える明治であっても箱根は別物。悪い流れに一気に飲み込まれてまさかのシード落ちとなってしまった。小袖と8区区間賞の大保が卒業するが、実力者が多いことに変わりはないので、次回は予選会トップからのシード権復活を目標に据えてくるだろう。